今日も書いた手紙。無愛想な茶封筒には入れないで、机の上に置いてみる。
読んでみる。
我ながら馬鹿な文面だな、そう思いながらまた火をつける。
紙は灰になって、もうあの思いは存在しない。
何度繰り返してきただろう。昨日もそうしたはずだ。
また同じことをやっている。文面もきっと同じはず。
同じ時間に同じ思いを募らせて、悶々とした心のままに思い続ける。
ある時手紙を書いて、あなたに渡す姿を想像する。
そして、あなたがその手紙を破り捨てる姿が浮かんでくる。
引き裂かれて、燃やされて、ゴミにしかならない。
そうだろう?きっと、あなたはそうするんだろう?
それとも、僕の目の前でその紙切れを突き返すか?
何も読まずに、僕の全てを否定するか?
多分そうする。
分かっているんだ。思いは一方通行に過ぎないと。
その報われない思いを一人の妄想の中で成就させて、また現実の中で嘆く。
想像だけで幸せになれるから、もう現実はごめんだと。
こんな僕は嫌いだろう?……もう、嫌われても構わない。
でもこの思いだけはあなたには否定して欲しくないから……
分かっている。打ち明ければあなたは僕を殺す。
殺された僕は、もうどうでもいい存在の一つにしかならない。
殺されたくないために、現実を放棄したいがために。
僕は、このままでいよう。
燃えるように輝く太陽に火をつけて、破裂させる必要なんてどこにもない。
このままで、困ることはない。
妄想の中のあなたの笑顔で十分だ。あなたの涙も悲しみも怒りも、もうまっぴらだ。
僕のためだけにあなたが存在するわけじゃないんだ。
ならば、僕の中に僕に従順なあなたを創り出すまで。
後悔なんてしないよ。
叶わない思いも僕の世界の中では十分に達成される。
やってほしいことならすべてやってくれる。
ほしいものならすべてあたえてくれる。
きずひとつないままに、えがおだけをむさぼりつくしたい。
たったひとりのよるでもあなたのなかをつかみとれる。
うごかないあなたのにんぎょうでもいいから、
ほしいんだ。
BGM:Amor Kana